20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その32

はじめに
「技」井出治クリーンエネルギー研究所所長の講演(平成10年10月17日・高次元セミナー)より

「はじめに」

★ イートヨーカ堂、ユニー、ジャスコなど大手スーパーが、先月(11月)11日から期間限定で実施した「消費税還元セール」が好調で前年比3-6割の伸びを示したそうです。これに対して大蔵省や自民党税制調査会は18日、国民にあたかも消費税が掛かっていないような偽りの宣伝をした疑いがある、として公正取引委員会と対応について協議しているという発表がありました。当初、大蔵省は民間の商売は基本的には自由として「消費税還元セール」について「静観」の態度をとっていたところ、消費者(国民)の購買意欲が予想以上に高く、将来の改正にも悪影響を及ぼす事態を回避するため公取との協議に踏み切ったそうです(平成10年11月18日中日新聞夕刊)。これに対して公正取引委員会は同日(ということは18日)「消費税分の還元をうたいながら値引きしていないなら違反だが、実際に5%の値引きを実施していれば問題ない」との見方を示しました。またイト-ヨ-カ堂は、事前に相談して公正取引委員会、国税庁から問題ないとの確認をとっていたのに・・・と突然の圧力に当惑気味。どうやら消費税を引き下げた場合の景気刺激へのインパクトを証明したことが政府・与党が強硬姿勢に転じた理由のようです。日本証券経済研究所の紺屋典子氏は、経済運営で失敗を重ねてきた自民党・大蔵省に批判する資格はないと批判している(平成10年11月19日中日新聞朝刊)。大手ス-パ-がセ-ル後の落ち込みを心配するように、消費者は期間限定の消費税還元セールだから財布のひもをゆるめたのであり、消費税率が下がったからといって消費が伸び景気が回復基調になるとは思えません。将来に対する漠然とした不安感が解消されない限り消費に対して慎重にならざるを得ないでしょう。公正取引委員会は大蔵省や自民党税制調査会の疑いをその日のうちに否定しました。消費税が導入されて10年になるのに国民が消費税が掛かっていないと誤解するするかもしれない、と本当に考えているとすれば国民はス-パ-の広告に惑わされて消費税がなくなったと思いこむ愚民、とみなければそういう疑問は出てこないことになります。私が一番問題だと思うのは、大蔵省や自民党税制調査会が根拠薄弱ないいがかりで大手スーパーに圧力をかけたことだと思います。マスコミも当事者もそのことを非難していませんが、今回の疑問は圧力をかけて消費税引き下げの動きを阻止しようというホンネが露骨であり、政治に誠意が感じられません。人から選ばれる政治家や公僕である官僚は、下半身疑惑で偽証の圧力をかけ弾劾裁判にまで発展させてしまったどこかの大統領のような見苦しい振る舞いをしてほしくない、と思うのは私だけでしょうか。

「技」井出治クリーンエネルギー研究所所長の講演(平成10年10月17日・高次元セミナー)より

★a.電車は他の乗り物に比べ非常にエネルギー効率のよい乗り物である。発進および加速の時に電気を使うがあとは「慣性の法則*」により突き進むので走行途中の消費電力は少ない。自動車でも高速道路はノンストップなので燃費効率がよいが、町中は信号などで発進・停止を繰り返すので燃費がよくない。*慣性の法則:あらゆる物体は外から力が作用しない限り運動しているものは同じ一直線上を一様な速さでどこまでも進んでいこうとする。

★b.さらに、停止のための減速時に発電機をまわして電気を発生させ、パンタグラフから戻しているため電気の利用効率を上げている。

★c.電気自動車や水素自動車などはクリーンエネルギーを売り物にしているが、電気や水素を作るのに化石燃料(石油や石炭)を使っており本当にクリーンとはいいがたい。また、ソーラーシステムはそれを作るのにたくさんのエネルギーが必要であり、それをペイするのに3年かかる(かつてはペイできなかった)。コスト的にペイしにくいが、近い将来枯渇する化石エネルギーからの脱皮を強調することで原子力産業と同様に「産業」として成り立っている(その産業に従事する人たちが食べていける)。

★d.ブラジルではガソリンにアルコールを混ぜて車を走らせている。軽油に代えて最初から使用済みの天ぷら油を使ってカローラディーゼルを走らせたひとがいる。臭くなくて軽油よりクリーンであるがディ-ゼル車の0.4%しか賄えない。

★e.ガソリンと電気の「いいとこどり」をしたプリウスの評判がよいが、まだ価格が高く同クラスのほかの車を買った方が結果的に安くつく(浮いたガソリン代で価格差を埋め切れない)。ただし、税制面での補助等もあり、井出氏の指摘は必ずしも正確ではない。また、バッテリーが他と違うためメンテナンスについてのコストを気にする指摘もある。ただ、これは生産が大きく伸びれば生産コストも下がるのでバッテリーの取り替えが必要となる頃にはコストが下がってくるかもしれない。

★f.井出氏はエネルギー効率110%のエーテルエンジン3号機を1988年に開発した。エネルギー効率が110%ということは、バッテリーでモーターを回すと消費された以上の電気が発生してバッテリ-に充電されバッテリ-の容量が減らない。最初にモーターを動かす時にバッテリーを使うがモーターが動き出すと使った以上の充電が行われ永久にモーターを回しつづけることができる。このような仕組みは「永 久機関」と呼ばれ、これまで発明されなかった(実は20年ほど前にアメリカのエドウィン・グレイという科学者がエマモーターという永久に動きつづける装置を開発したが、やがて歴史の表舞台から消えてしまった。井出氏はそれをアメリカへ見学にいき日本で独自に開発した)。この装置は特殊なコイルを使っており、磁場の構造を変えてしまう。そうするとその磁場から未知のエネルギーが入って充電が行われる。

★g.井出氏はこのエ-テルエンジン3号機の研究内容を論文にまとめてアメリカ物理学会の「Journal of Applied Physics(応用物理学ジャ -ナル)」誌に1995年6月1日号に発表した(ここまでの経過をまとめた本が「パンド-ラの遺産」というタイトルでまとめられている。ビジネス社:1996.11.12第1刷。いくつかの書店で探したが見つからず、図書館で借りた)。

★h.論文は最初アメリカ電気電子学会へ投稿したのであるが、資料の追加などいくつかのハ-ドルの末、論文掲載はかなわなかった。その原因は「エネルギ-保存の法則*」を覆す内容を持っていたことが影響した。そこで論文内容を絞り、表現も示唆にとどめるなどしてアメリカ物理学会へ投稿し直したところ意外なほど早く論文掲載の通知が来た。
*エネルギ-保存の法則:あらゆる自然現象におけるエネルギ-の変換では、それに関係したすべてのエネルギ-の和は一定に保たれる。別の言い方をすれば、エネルギ-は力学的エネルギ-、熱エネルギ-、電気磁気エネルギ-などいろいろなかたちに変換されて利用されるが、そのエネルギ-総量は変わらない。ただしこの法則を一般的に説明する方法ないし理論はない。しかし、この法則に確実に従わないと断言できる事実も見いだされていない。そこで学者は、この法則を物理学の最も基本的な原理と考え、全ての物理学の理論は、これに矛盾しないように構成する方針をとっている。つまり、あらゆる物理学の理論はこれに矛盾しないことを「方針」としているだけで「真実」とは言い切れない。人間が便宜上作った単なる「方針」であればそれを覆す事実が発見され実証されればその理論は変更されなければならない。ところが「エネルギ-保存の法則があるから永久機関などあり得ない」という考え方をする人が実に多い。「エネルギ-保存の法則」があるから永久機関ができないのではなく、「永久機関」が今までできなかったから「エネルギ-保存の法則」が「基本方針」として位置づけられたのである。

★i.前回の“原子転換”今回の“未知のクリ-ンエネルギ-”と「そんなことはあり得ない」と常識で思われているテ-マの話を紹介してみました。あと2年に押し迫った20世紀を生き抜き、21世紀を夢のあるものにするには常識やこれまでの価値判断(モノサシ)にとらわれない考え方が大切であると私は思います。井出氏の著書の中でユダヤ人の科学者のことが書かれています。彼らは一様に「博識」であり、その思考方法は「知識よりも知恵を重んじる」もので、とにかく「ちょっと違うな」という感じがする。その違いを井出氏はユダヤ教教典の「タルム-ド」に求める。これは旧約聖書の中の「モ-ゼ五書」であり「ト-ラ-」と呼ばれる教典の解釈本である。この書物は文章と文章の行間を大きくとってあり、その行
間に読者の意見、考えを想起させ、書き込めるようにしてある。書かれたことを丸のみに信仰するのではなく、「あなたはここに書かれた意見についてどう解釈するか?」を問いかけるのがユダヤ教であり、これが 「独創的で柔軟な発想」を生んでいるという(p103-p105)。