20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その31
はじめに
「体」篠原佳年・松澤正博著「モーツァルト療法」(1998.10.22第1刷:マガジンハウス、1600円+税)より
「技」の参考図書紹介/久司道夫「原子転換というヒント」(1997.7.7初版:三五館1300円+税)より
「はじめに」
★ 平成10年10月27日中日新聞朝刊に「崩れる“学校歴”信仰」という見出しの特集記事〈テ-マは大学が変わる〉が掲載されていました。ことし春、都内で実施された人気企業の採用試験で試験官に「私は東大です。御社はなぜ、大学について聞いてくれないんですか」という質問をした男子学生がいたそうです。試験官がすかさず「じゃあ、何をやろうと思って大学に入ったんですか?」と切り返したところ、この学生は沈黙してしまい二次試験には進めなかったそうです。試験官は受験勉強の勝者として「すごく勉強している印象を受けた」と勤勉さを評価しながら「彼と一緒に仕事したいと思えなかった」として不合格にしたそうです。労働省によると大企業の34%が「学校歴」を一切問わないそうです。企業の終身雇用制が有名無実となり、偏差値の高い大学に入れば「いい就職」ができ「いい人生」がおくれるという“学校歴信仰”が崩れてきているようです。ネットワーク地球村の高木善之氏は交通事故で寝たきりの状態になった時こういう自問自答をしたそうです。Q:生きる目的って?A:成功すること。Q:成功って? A:出世して、お金を貯めて、したいことをして……Q:何がしたいの?A:いい家に住んだり、いいクルマに乗ったり、いいものを食べたり……Q:いいってどういうこと?A:……人よりも贅沢をすることかな。Q:どうして贅沢したいの?A:認めてもらいたいからかな。Q:贅沢をすれば認められるの?A:………Q:何を認められたいの?A:自分の価値を。Q:自分の価値って?A:自分が重要だということを、かな……Q:自分では分からないの?A:もちろん分かってるさ、でも、それだけではダメなんだ。Q:どうしてダメなの?A:自分で分かってても、自己満足じゃダメなんだ。Q:どうして?A:みんなに認められないとほんとじゃない。Q:みんなって?A:たくさんの人。周りの人みんな。Q:周りの人が思えば、自分も思うの?A:………Q:自分では分からないの?A:………Q:どうすれば尊敬されるの?A:いい学校に行って、いい会社に入って、出世をして……Q:どうすればそれができるの?A:要領よく、賢く、周りを出し抜いて……Q:そんな人を尊敬するの?A:………(高木善之「転生と地球」1997.9.4第1版:PHP研究所1500円+税、第2楽章ベッドにて)
何のために勉強をしたのかと言われれば「受験のため」とか「資格取得のため」という次のステップのために勉強をしていた、という気がします。決められた時間割に従って授業を受けることや、試験でよい成績をあげるためにするのが「勉強」という意識しか持っていませんでした。大学に入って自分の意志で授業を選ぶという意志表示をすることになりました。といっても、その頃していたことといえばどの先生の単位がとりやすいかだとか、授業の途中で出入りしたり、授業をさぼったりといったおよそ学問をするという次元からはほど遠いことをやっていました。当時のことを振り返ってみて勉強らしいことをしていた(押しつけでなく、自分の意志で学ぼうとした)と言い切れるのは読書をしていたこととレポ-トを書いたり、そのための文献漁りをしたことのような気がします。前者は強要された勉強でなかった点で、後者はそのテ-マに関する資料を集めたことに対する自己満足と人の文章を丸写ししたとしても意味を理解し自分なりの表現で書き上げたという自己満足をした点において充実感を味わったからだと思います。小中学校の夏休みには自由研究や読書感想文という生徒の自主性を尊重する課題授業がありましたが、勉強に対して受け身であった私にとっては「どうしたらいいかわからない一番いやな宿題」という受け止め方をしていました。「好きなようにやらせてもらえる」という知的好奇心を引き出す授業を受けていればもっと楽しい印象を持てたかもしれません。せめて自分の子供には「受け身」だけの勉強はしてほしくないと思います。
最近、児童、生徒が先生の言うことを聞かず、授業をまともにできないとこぼす教師が増えてきているようです。これは「義務教育」の意味を取り違えているのではないか、という気がします。児童、生徒は「教育を受ける権利がある」のであって「教育を受ける義務がある」のではありません。「義務教育」というのは親や学校、教師に児童、生徒の教育を受ける権利を守る義務があるということです。授業のじゃまをした児童、生徒は「教育を受ける権利を放棄」したのであり、他の児童、生徒の教育を受ける権利を侵害するおそれがあるから教室から出てもらうという断固とした姿勢を示すべきではないでしょうか。そしてそのことを児童、生徒にきちんと伝え教育を受ける権利は自己責任という認識を持ってもらわなければいけないと思います。
「体」篠原佳年・松澤正博著「モーツァルト療法」(1998.10.22第1刷:マガジンハウス、1600円+税)
★a.電話を使う時、左手に受話器、利き腕の右手に筆記用具というパターンが圧倒的に多い。「電話はすぐメモが取れるよう左手で取れ」と教えるビジネス書もあるぐらいで、電話を左手で取れば受話器は当然のように左耳に当てられる。この習慣は左耳を「利き耳」にしてしまうことが多い。
★b.電話は人と会話をするためのものであり言語情報の伝達手段である(音楽が流れるとすれば相手が会話を保留にした時のメロディぐらいである)。
★c.言語は左脳が優先して処理する。人間の感覚器官は脳との関係では左右が逆になっているので、左脳の言語野にダイレクトに言語情報を伝えるためには右耳で捉えた方が現実処理能力が高い。
★d.左耳の情報は一度右脳に入る。右脳はそれが言語情報であることが分かると左脳に伝達する。情報伝達に時間差が起こり、右脳というフィルターが間に入ることによって情報の前後関係が混乱したり、一部が欠落したりすることがある。聞き違い、取り違いが右耳に比べ起きやすい。
★e.利き耳を左耳から右耳になおすには受話器を右耳に当てる習慣をつけるとかなり改善される。左右の耳の聴力のバランスがとれていて、利き耳が右耳であるのが理想で右耳に偏りすぎるのも良くない(p204ーp206)。
★f.人間の五感のなかで最も早く発達するのは皮膚感覚と聴覚である。妊娠6ヶ月頃には耳の構造が完成して音が聞こえるようになっている。視覚、味覚、嗅覚については胎児として母親の胎内にいる間は準備段階であり、新生児となって初めて発育を始める(p69-p70)。感覚器官の中でとりわけ早期に耳が活動を開始するということは、これから訪れる人生の先導役を耳が務めるということ。胎内に宿った時から人間は耳からの情報によって人生への態勢を整える(p77-p78)。
★g.篠原氏は、耳鼻咽喉科および音声医学が専門のアルフレッド・トマティス博士の「トマティス理論」を受けて耳の成長段階には次の8つがあると主張する(p77-p83)。
第1期【胎内耳】胎内の期間:胎児は羊水の中で外界の音に聞き耳を立てている。通説は低音主体の音といわれているが、トマテスィス博士は8000ヘルツ以上の超高音域であると主張する。
第2期【原始耳】誕生から生後6ヶ月前後:音の大きさ、高さの感度、方向感覚などが急速に発達。母音や子音の区別だけでなく、英語のrとlなど子音の複雑な区別もできる超人の耳。いいかえれば新生児の脳はどの言語も受け入れられる白紙の状態にある。
第3期【順応耳】生後6ヶ月から1年前後:耳が母国語の聞き取りに適応(特化)していき、基本的な耳のスタンス(民族耳―日本人であれば低音から1500ヘルツまでの音を優先的に聞き分け、それ以上の音域には言語として判断しないという特性)ができる。その代わり母国語にない複雑な子音は区別できなくなる。
第4期【イメージ耳】1歳から5歳前後:言葉をしゃべること、コミュニケーションを訓練し学習する期間。コミュニケーションを通じて自我意識を徐々に形成し、やがてイメージとして確立し、自己保身のサバイバルの方法を習得する(保身耳ーそれまでの経験で受けたストレスやトラウマから身を守るための耳。自己に都合の悪い音声を遮断する特殊な機能を持つ。自閉症となって現れることもある)。
第5期【言語耳】6歳から9歳前後:母国語が意識に定着。思考回路がイメージ優先から言葉での思考に移行しつつある段階。右脳と左脳の役割が明確に定まってくる時期。
第6期【統合耳】10歳から11歳前後:母国語と社会環境に適した耳を最後に調整して完成する期間。自己が社会に対するスタンスを耳(民族耳・保身耳)として統合し定着させ、また深い思考や思索に対応する精妙な音域への受け入れ態勢を完了する。成長が止まり耳の柔軟性がなくなる。日本の英語教育は耳が日本語に凝り固まって民族耳ができあがったこの時期以降に行なわれるため習得がうまくいかない。
第7期【社会耳】12歳から壮年期:すでに獲得した民族耳と保身耳をベースに、原則として変化しない時期。
第8期【老化耳】老年期:老人性の難聴が出て来て、高音域が聞こえなくなり、自分の発声もくぐもり自分の中に閉じこもっていく。
★h.言語のパスバント(言語において優先的に使われる特定の音域)はその土地の音響インピーダンス(音の抵抗)を受ける。例えば北米大陸では1000~2000ヘルツの周波数帯域の音がよく通る。このためイギリス英語はパスバントの異なる米語に変化した。各民族言語のパスバントは次の通りである(p118-121、p139)。イギリス英語:約2000ヘルツ~16000ヘルツ 米語 :約700ヘルツ~3500ヘルツフランス語 :125ヘルツ~400ヘルツ及び約1000ヘルツ~2000ヘルツドイツ語 :約125ヘルツ~3000ヘルツ イタリア語:約2000ヘルツ~4000ヘルツスペイン語 :125ヘルツ~500ヘルツ及び約1500ヘルツ~2500ヘルツロシア語 :約125ヘルツ~8000ヘルツ 日本語 :約125ヘルツ~1500ヘルツ
★i.トマティス博士は、さまざまな臨床的実験の末、患者が聴覚を取り戻し、その結果として心因性のトラブルを解消していく際に、音楽が持つ治癒力に着目する。博士は西洋、アジア、アフリカなどあらゆる種類の音楽素材で治療の実験をした。その結果効力を持つものとして残ったのはモーツァルトの曲のみであった。モ-ツァルトの音楽には、喜び、平穏、創造力、何かしようとする欲望、生きる喜び等を駆り立てる作用がある。また、どの地域、どの民族にも効果があがる普遍性のある音楽である(別紙CDカタログ解説)。
★j.そして、博士はトマティスメソッドと呼ばれるトレーニングを開発した。つまり耳を生まれたままに戻して再構築をする方法である。例えば第7期の社会耳を構成している「民族耳」と「保身耳」を徐々にほぐして柔らかくし、体内で聞いた音の世界を追体験することによって耳の聴覚(聴力)を胎児だったころの状態に戻してリラックスさせ、それが完了したら、改めて耳の固体発生の順番に準じて耳をリニューアルさせる。まず「原始耳」をつくり、目的に合わせて「順応耳」をつくり、「イメージ耳」「言語耳」「統合耳」の段階をクリアして、「民族耳」を新調したり「保身耳」を発生しないようにして、まったく新しい耳と入れ換えてしまうというものである。耳改善の目的に従い、英語希望ならその時英語の音声を、イタリア語ならイタリア語というように音の素材を使い分ける。外国語以外の場合は主にモーツァルトとグレゴリオ聖歌が使われる。また、「老人耳」に赤るに高周波音を送り耳を刺激すると脳にエネルギーが供給されて若返る(p211-216、p195-196)
★k.モ-ツァルトは4歳で誰にも習わなかった第2ヴァイオリンのパ-トをひとつも間違えずに弾いたり、14歳の時、こみいった二重合唱曲「ミゼレ-レ」を一度聴いただけで譜面にしたり、楽器の助けを借りずにいきなり楽譜を書きはじめ書き直しも書き損じもない、という音楽の天才である。
★l.モーツァルトが生まれた時母親はお産で衰弱し母乳が出なかったという。そのためとても小さくて病弱な子供で歩き始めたのは3歳になってからであった。成長が他の人より遅かったことから普通6ヶ月で機能が整う原始耳が1年以上もかかった可能性がある。ゆっくりと成長することによって原始耳の能力が失われず、それが「魔法の耳」「振動の耳」として天才たりえた可能性がある。さらに言語耳の時期に神童と呼ばれヨーロッパ各国を演奏旅行したモーツァルトは、ドイツ語、フランス語、英語、イタリア語が使われている国々をまわり、複数の言語をしゃべるだけでなく、さまざまな言語表現を身につけるという幸運に恵まれている。
★m.決定的だったのは幼少のモーツァルトの家庭環境で、とりわけ父親の存在が決定的だった。モーツァルトの父であるレオポルドはザルツブルグの大司教のおかかえ音楽家であり4歳年上のナンネルに音楽の英才教育を施していたことから原始耳のうちから音楽漬けであった。トマティス博士の父親はオペラ歌手であり、博士はオペラ「魔笛」のアリアをよく聞いて成長した。
★n.jのトマティスメソッド・トレ-ニングは世界17カ国230のセンタ-があり、日本では7カ所のセンタ-で受けられる。通常は90セッション(45時間)、1日2時間で23日、3時間で15日、6日間で終了する集中コ-スがある。センタ-は六本木、南青山、長野、大阪、篠原氏が開設した倉敷などで愛知県にはまだない。南青山では1日オ-プンデイを設けている(TEL.03-3498-5833、営業時間は(月)~(土)AM9:00~PM9:00)。また、トマティス博士がモ-ツァルト全626曲の中から特に治癒効果の高いものを厳選したCD集が㈱アルクより販売されている(TEL:0120-120-800、価格28,300円:収録曲は別紙)。
「技」の参考図書紹介/久司道夫「原子転換というヒント」(1997.7.7初版:三五館1300円+税)
★a.牛は草しか食べないのにあれだけ大きくなり牛乳を出す。草がどうして肉や牛乳に変わっていくのか。それは牛が食べた草が牛の中で原子転換をして肉や牛乳になると考えないと説明できない。
★b.原子転換とはある元素が他の元素に変わる、例えば元素№6炭素が元素№26鉄に変わる、元素№80水銀が元素№79金に変わることを言う。
★c.牛が食べた草が肉や牛乳になるのを生体内原子転換という。植物に含まれるクロロフィルの核(元素№12マグネシウム)が元素№8酸素と融合して元素№26鉄をつくりこれが核となって血液のヘモグロビンになる。したがって緑の野菜をたくさん食べれば貧血は治る。
★d.原子転換は起こらないという科学の定説を覆し、未来に希望を与えてほしい本である。