20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その28

はじめに
「体」一倉定著「正食(セイショク)と人体」(平成9年11月1日第1刷:致知出版、本体2000円)より

「はじめに」

★ YTAメモ19を発信したときにいっしょにご案内させてもらった意識波動医学研究会の第2回オ-プンセミナ-が6月7日(日)東京よみうりホ-ル(JR有楽町駅前)で開催されることになりました。同会の会長である宮崎雅敬氏が主催する東海高次元研究会のセミナ-を受講していた縁で同会の会計顧問を引き受け、昨年第1回のオ-プンセミナ-(平成9年6月15日開催)のお手伝いをいたしました。その時のタイムスケジュ-ルは別紙セミナ-講演録の抜き刷りのとおりですが、700名を超える方にご参加いただき、用意したレジメが途中でなくなってしまいました。当時発行されていたサンマ-ク出版のエヴァ(残念ながら97年12月号で休刊)にセミナ-の案内広告を出したり、共催をしていただいた“船井幸雄と楽しく生きる会”を通じて参加を呼びかけました。セミナー会費は第2回と同じ8,000円(当日会費は10,000円)。ただし意識波動医学研究会会員(入会金10,000円、年会費12,000円)は無料。船井幸雄と楽しく生きる会の会員はセミナー会費6,000円(すべて税込み料金)といたしました。意識波動医学研究会に未入会のセミナー参加者に入会を呼びかけ、その入会受付事務を担当いたしました。入会申込書を
書いてもらい、セミナー参加費用との差額をお支払いただきました。20人ぐらいは受付をしたように思います。申込者はやはり首都圏の方が多かったですが北海道からの参加者の受付をした覚えがあります。途中で帰られる方が少なく、最後まで熱心に受講されていたように思います。(注:抜き刷りは後日意識波動医学研究会の会員に送られてきた講演内容をテープおこししたもののうちから矢山利彦先生の講演を参考に同封いたしました。他の講演もお知りになりたいものがありましたらお送りいたしますのでお申し出下さい)なお、オ-プンセミナ-のパンフレットを同封いたしますのでご興味がありましたらお出かけ下さい。

「体」一倉定著「正食(セイショク)と人体」(平成9年11月1日第1刷:致知出版、本体2000円)より

★a.著者は「社長学」シリーズ(産業能率大学出版部刊)の著書で知られる現場第一主義の経営コンサルタントである。空理空論を嫌い、社長と一緒に金策に走り徹底的に利益第一主義を標傍する。弟子を一切持たず、すべて自ら指導に当たる。会社は社長次第でどうにでもなるという指導理念そのままに一人でコンサルタントをしている。船井総研や田辺経営のようなコンサルタント集団にはなっていない。

★b.上記著書は一倉定の体験的健康学として致知出版より発行されていた小冊子「正食と人体」(Ⅰ)~(Ⅳ)を集約したものである。前回のYTAメモで自然塩の効用について紹介したが一倉氏の著書はまだ読んでいなかった。愛知県図書館へ小冊子をさがしに出かけたところこの本に出会えた。

★c.一倉氏は石塚左玄著「科学的食養長寿論」および桜沢如一著「無双原理・易」を基本原理に一倉仮説を指導事例で補いながら実践的な健康学を展開している。

★d.人体には自然治癒力が備わっており、それが病気を治す。自然治癒力が働かないような状態をつくるから体調を崩したり病気になったりする。自然治癒力の働きを妨げている一番の原因は「減塩思想」や「近代栄養学」に基づく食事である。

★e.塩分をとりすぎると血圧が上がる、というのは常識のように言われているがその根拠となっているのはダ-ル博士の調査報告とメ-ネリ-博士の実験である。前者は日本の都道府県別食塩摂取量と高血圧の発生率を調べたところ塩分をたくさん取っているところほど高血圧の人が多かった、というものである。後者はネズミ10匹に通常の20倍の塩分が入った食物と1%の食塩水を6カ月間とらせたところ10匹のうち4匹が高血圧になっていたというものである。前者はもっと詳しく調べたところ塩分摂取量が多くても高血圧になっていない地区もあり、もう一度調べ直したところ犯人は白米食であることがわかった。後者は高血圧にならなかった6匹のネズミを無視して塩を高血圧の原因と決めつけるなど博士の判断には信用できないところがある。また、通常の20倍の塩分(通常1日10gだとして200g)など6カ月どころか1日でもとれるものではない。ムリヤリとっても自然治癒力が働いて体が受けつけない。胸がムカついてきて吐いてしまったり下痢の症状を起こして体外に出てしまう。慢性的な塩分過多が高血圧の原因かもしれないので、自分の体を徐々に塩分過剰状態に持っていったところ2週間ほどで塩分中和食である果物や甘いものが無性に欲しくなってきたという。つまり塩分の取りすぎは不可能である(p20-26)。

★f.高血圧の原因は肉食過多、精白米食による血液の酸性化である。血液が酸性になると粘っこい状態になり、毛細血管の中に血液が流れこみにくくなる。そのために心臓の圧力を高めて血液を送り込んでいる状態が高血圧である。自然治癒力は血液中に含まれる酸性物質のコレステロールや中性脂肪を減らして血液をアルカリ性へもっていこうとする。これは血液中の酸性物質を血管壁が吸着することによって行われるが、これは血管の内壁を狭めたり血管の弾力性を奪ったりする。自然塩は強アルカリ食品であり、血液をサラサラにして毛細血管を流れやすくするから心臓の圧力を高める必要がなくなる。また、血液がアルカリ性になると血管壁にこびりついた酸性物質を中和して洗い流し血管内部の掃除をする。通説は塩によって毛細血管が締まるから血圧が上がると考えているが血液を塩などでアルカリ性にすることによって高血圧は治る。

★g.低血圧は水、果物、甘いもの、生野菜を多くとっている人に起こる症状である。果物にはカリウム、クエン酸、果糖、ビタミンC。甘いものには白砂糖、生野菜にはカリウム、ビタミンCなどが含まれ全て筋肉の力を弱めるという特性を持っている。特にカリウムはこの力(タンパク質を緩めてしまう)が強い。これらの食物が筋肉を緩め、心臓の血液圧送力が弱くなって低血圧を引き起こす。この状態が進むと老廃物の除去に支障を来たす。老廃物が体の中に多くなると、自然治癒力は体に最も害を及ぼす危険の少ないところ(筋肉の中)へ老廃物の害(尿酸)をもっていって放出する。これが“通風”で最も血行の悪い(心臓から最も遠い)個所、右足の親指の腹から痛くなる(左足から痛くはならない)。塩には「筋肉を締める」という機能があり、塩分補給で緩んでいた心臓が正常に戻り低血圧が治る。新陳代謝が促され老廃物が除去されるから通風も治ってしまう。

★h.腸の筋肉の動きが弱くなり便を体外に押し出す力が弱くなって便秘を起こす。便秘がちの人はやや濃いめの塩水をコップ1杯飲めばたちまち通じがある。(p67-70、p75-76)

★i.おもらし、ボケ、寝たきり、アルツハイマーは、塩分の薄い血液が原因の一連の病気(というより症状)と考えられる。膀胱や肛門の出口は括約筋でシッカリ締められていて便が体外にでるのを防いでいる。血中塩分が不足すると、括約筋がゆるんで便の排出を調整できなくなり“おもらし”ということになる。

★j.この段階をすぎると全身の筋肉が緩んでくる。人間の筋肉のうち瞬時といえども止めることのできない筋肉が2つある。呼吸筋と心臓の筋肉である(特に呼吸筋は塩分不足に弱い)。この2つには何としても大量の血液を送ってやらなければ生命の危険がある。自然治癒力は必要部分に血液を集めるため、その部分の毛細血管を膨らませ平素の何倍もの血液を集める。心筋と呼吸筋に血液が集まれば他の部分への配分が少なくなる。それも、最も危険の少ない部分けの塩分が不足して動けなくなる。これが“寝たきり”で「動かしてはいけない」という自然治癒力の警告が“激痛”という形で発信される。痛がる寝たきり老人を歩かせることがいかにまちがっているかおわかりになると思う。さらに血液の塩分濃度が薄くなると今度は脳に回す血液を減らして心臓と呼吸筋に送る。脳は血液不足のために栄養失調になる。それが“ボケ”であり、これが高じて脳細胞の一部が死んで しまったのが“アルツハイマー”である。原因は塩分不足であるから自然塩をとればよい(P81-83)。

★k.白砂糖を多量に摂取し、膵臓が機能しきれなくなると「糖尿病」になり血液糖分が過多となる。これが血液中の塩分を中和して極度の塩分不足を起こし、そのことが強度の新陳代謝障害を起こして全身の栄養失調を引き起こし、全身衰弱が進んでゆく。そのためセックス不能に陥り合併症を併発する。糖尿病の治療には、塩分中和物質の白砂糖、果物、甘いもの、生野菜を絶ち、塩分を多量に補給して血中塩分濃度を高め新陳代謝機能を回復させる。また小豆、カボチャ、昆布を摂取して膵臓の機能を回復させる(p73-74)

★l.一倉氏は塩分不足を補う“特効薬食”として「卵醤」をすすめている。処方は有精卵(手に入らない場合は無性卵でもいたし方ない)1個につき殻の片方に並々1杯の辛口醤油加えたものをかき混ぜて飲む。用法は1日1個(非常の場合は1日2個まで)として3日か4日続けたら1週間ほど休む。2日か3日続けたら、また1週間休みそれ以降は1週間に1個程度とする。塩分不足の人は5日でも7日でも連続して飲んでよい。そのうち自然治癒力が働いて飲みたくなくなるからその時中止すればよい。これだけで体調は全く変わってしまい、冷え症なんかはどこかへ飛んでしまう。不思議なくらい疲れなくなって、夜は寝付きがよく熟睡し、朝は6時頃には自然に目がさめる。過労死なんてのは典型的な塩分不足で、塩分十分ならば、過労死したくともその望みは絶対にかなえることはできない。卵醤1日1個でよい(p27-29)

★m.正食の基本条件は「いかなる食物であっても“全体食”でなければならない」というのがある。頭から尻尾まで全部食べられる小魚はよいが、全体食のできない大型の魚は失格である。現代栄養学はカロリー(エネルギー)のある有機栄養素(タンパク質、脂肪、含水炭素、ビタミン)にのみ関心を示してカロリーのない無機栄養素にあまり関心を示さない。有機栄養素は燃えてカロリーを発生するがそれをコントロールするためには燃えない無機栄養素が必要である。ところが無機栄養素を多く含む貴重な皮、骨、内臓、根葉、液汁などを精製したり、調理したりする段階で大部分取り去ってしまい、食べる段階では大欠陥食となってしまっている(全体食であれば足りていた無機栄養素が、部分食であるために不足している)。自然治癒力は不足する無機栄養素をとるよう命令する。無機栄養素だけをとることはできず、部分食で補おうとすれば必要以上の有機栄養素をとることになる。これが「食べ過ぎ」であり余分な有機栄養素は皮下脂肪として貯蔵される。つまり肥満となる。しかし、過食をしてもまだ無機栄養素が不足しているのが現在の食事であり、様々な体調不具合となって現れてくる。だから、健康を回復するためには有機と無機のバランスのとれた食事をすることが大切であり、それが「正食」である(p55-56,p166-168)。

★n.正食の主体となるのは「玄米」が最良であるが、玄米の表皮には様々な有害物質(重金属や残留農薬など)が多量に含まれている、という。従って白米の方がむしろ安全という意見がでてくる。ところが中川雅嗣・寺島文夫著「薬のいらぬ健康法」(文理書院刊)57ページによれば、1日分の玄米には 0.09PPMの水銀が含まれているが体内に残るのは0.015PPMである。これは玄米に含まれるフイチン酸が放射線や重金属類と結合して体外に排出する働きをするからであるという。これに対し白米には 0.04PPMの水銀が含まれているがフイチン酸があってもごく微量のため0.039PPMが体内に残るという。一倉氏は20年以上も汚れた玄米を食べ続けているが塩分十分の陽性血液のために、陰性の農薬やさまざまな添加物も中和している(一倉仮説)ため血液は他の人に比べて清浄である(P192-194)。

★o.ヤマギシ会では産卵数が落ちる2年ドリ(鶏)に7日から14日の強制断食を行っている。そうすると自然放置よりも産卵が増え、卵殻の厚い大きな卵を生むようになるという。また、そのトリから生まれたヒナは健康で伝染病に対しても強いという。香川県大川郡引田町で2年魚の養殖ハマチをイケスに入れ水深30mの海底で1カ月のエサ断ちをしたところ丈夫になって病気にかからず順調に成育した(P287-288)