20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その20
はじめに
★ 先日、カサの補修部品である「ハトメ」に使う「ヤットコ」によく似た形の道具を買ってきました。購入価格は2,600円プラス消費税。安いカサなら2本は買えます。高い買い物のように思うかもしれませんが、カサの骨が1本折れただけでもう使いません。使えないのではありません。もし雨が降ってきて骨の折れたカサ1本しかなければ濡れるよりはいいから使います。しかし、ふつうは新しくカサを買いなおして壊れたカサは燃えないゴミに出します。骨さえ直せば使えるのに、もったいないと思ってしまいます。なおすより買った方が安い、というのはよく聞かれる反論です。しかし、例えば補修部品の「ハトメ」は20個で30円「先ヤロー」は3個で90円と安いものです。慣れれば修理に30分もかかりません。一番のネックは補修部品を売っていないことでしょう。東急ハンズの片隅に少しだけ置いてあります。もし行く機会がありましたらついでに買っておかれてはいかがでしょう。
現在は大量生産によって製造コストが下がり、修理のように個別の手間賃仕事は人件費のかたまりであるため、中古品をなおして使うより新品を買う方が安くて性能がよいということがよくあります。資源が無尽蔵にあるのであれば、使い捨て消費社会の方が効率的かもしれませんが全ての資源は有限で「あと〇年で枯渇する」といった予想がでています。これからも安く大量に作れるとは言えないのです。使い捨てのもう一つの問題は大量のゴミがでることです。修理であれば、部品の一部取り替えだからゴミの量は少なくてすみます。「分ければ資源、混ぜればゴミ」という標語があるそうです。使えなくなった家財は粗大ゴミとして扱うしか処理方法がないかもしれませんが、資源として再利用できるものもたくさんあります。1棟の世帯数が100戸以上あるマンションを訪問したとき敷地内に「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「新聞等」と区分けして置き場所が決めてありました。有限である資源を再利用していく仕組みづくりをもっとしてほしいものです。
また、丸善で本を3冊買ったときに「カバーをおかけしますか」と聞かれ「いらない」と答えたら「地球環境の保全のため包装簡易化にご強力くださいましてありがとうございます」と書かれたたすきで本を綴じ袋にいれてくれました。再利用も大切なことですがムダ遣いしない(させない)ようにしたいものです。
「技」二者択一の質問をするときは選ばせたい選択肢を後にもっていく方がよい
★a.プレーボーイと評判の高い男性俳優が週刊誌の対談で、女性を口説くとき「帰る?それとも泊まる?」と言い、決して「泊まる?それとも帰る?」とは言わないそうである。
★b.女性は「帰る?」と聞かれるとある種の安心感とともに軽い失望を味わうらしい。どうやら無意識のうちに誘われることを期待していたのに、それを裏切られたと思うらしい。その失望感の後で「泊まる?」と聞かれると失望感が消え去り、たとえ答えなくても「沈黙」がそのままOKの意志表示になる。
★c.逆に考えてみるとさらによく女性心理がわかる。最初に「泊まる?」と言われるとギクリとして警戒心が先にたつ。つぎに「帰る?」と言われて黙っていれば「帰る」という返事になり、それをくつがえして「泊まりたい」とは女性の立場からは言いにくい。
★d.私たちは迷っている相手に二者択一をさせなければならないことがある。できればこちらの選ばせたい方を選ぶよう仕向けたいが、迷っている相手にこちらの結論をストレートに押しつけるとかえって警戒されて反対の結論になりやすい。そこで相手の意向を聞くかたちにしておいて、選択肢の配列を工夫してやる。
★e.ポイントは選ばせたい方を必ず後ろにもってくることである。これは人間が結論や決定を後にもってくる修正をもつことを巧みに利用した心理テクニックで、たとえばベテランのデパートの店員は客が買い物をしたとき「お送りしましょうか?それともお持ち帰りになりますか?」と聞き、ほとんどの客から「ええ、持って帰ります」という回答を引き出し、デパートの経費節減に貢献しているという。
★f.これは毎月4点の書籍紹介をしているトークス・カセット・マガジン4月号で取り上げられた多湖輝著「仕事の心理法則」(ごま書房刊、1600円)に出てくる話で、元ネタはカセットテ-プである(本はまだ読んでいない)。
★g.著者の多湖輝氏はカッパブックス(光文社)の「頭の体操」シリ-ズの著書もある心理学者(千葉大学名誉教授)で、心理学の研究成果を日常生活に生かすためのノウハウ本を何冊も書いている。
★h.多湖氏がごま書房で最初に書いた本は「心理トリック」(昭和46年12月10日初版発行)当時の肩書きは助教授である。私がこの本を読んだのは昭和47年、大学1年の時である。この本の中でいちばん印象に残ったのは、アメリカのジム・ビカリーが映画のフイルムの映像の中にコーラやポップコーンのメッセージを一瞬、観客が気づかないように紛れこませたところ、売店のコーラやポップコーンの売上が増えたという実験である(p220ー221)。これは、オウム事件で問題となったサブリミナル効果である。
★i.なお上記法則は、相手が迷っていたり、どちらでもよいと思っているような時に有効なもので、相手から「帰る。」とか「送って。」という返事が返ってくるようなら、それは相手の素直な意思表示であり、心理テクニックでどうにかなるものではない。
「心」M・スコット・ペック[訳]森英明「平気でうそをつく人たち」(1996.12.25第1刷:草思社。なお、原書の出版は1983年)より
★a.サブタイトルが「虚偽と邪悪の心理学」現在60万部のベストセラーだそうである。私は50万部という新聞広告を見て購入する気になった。
★b.本書の冒頭で「はじめに 取扱いに注意」と警告している。もしこの本に興味をもたれて読まれる方は読み終わったらもう一度「はじめに」を読み返すことをお勧めしておきたい。
★c.ペック氏は、心理療法カウンセラ-であり、自らの診療経験から世の中には「邪悪な人間」がいると考えるにいたったという。
★d.邪悪な人間とはこんな人である(表紙カバー解説より、詳細はp94-104)。
*どんな町にも住んでいる、ごく普通の人。
*自分には欠点がないと思い込んでいる。
*異常に意思が強い。
*罪悪感や自責の念に耐えることを絶対的に拒否する。
*他者をスケ-プゴ-トにして、責任を転嫁する。
*体面や世間体のためには人並み以上に努力する。
*他人に善人だと思われることを強く望む。
★e.ペック氏は本書の中で、7件の患者をとおして出会った邪悪な人達(患者の家族や患者本人)との会話を再現し、彼らの巧妙な責任転嫁のやり方と隠微なうそをリアルに描きだしている。そして、彼らの核にあるのが過度のナルシシズム(自己愛)であることを浮き彫りにしている。
★f.邪悪(evil)という字の綴りは生きる(live)という字の綴りと逆になっている。悪は生に対置されるものであり、生命の力を阻むものが悪である。
★g.言いかえれば、悪は殺すことと関係がある。ここでいう殺しには生物が生存の必要から殺すことは含まれないが、肉体的な殺しだけを言っているのではない。悪は精神も殺す。人間の生の特性である意識、可動性、知覚、成長、自律性、意志といったものも殺す。従って悪とは、人間の内部または外部に住みついている力であって、生命または生気を殺そうとするものである、と定義できる。善は逆に生命または生気を促進するものである(p56-57)。
★h.うそには許されやすいうそと許しがたいうそがあるが、それがうそであり、裏切りであるという点に置いてはみな同じである。過度のナルシシズムにおちいった邪悪な人たちは自分自身に対して正直でないため、自分に都合のいいように解釈していることに気づいていない(気づこうとしていない)。そこで平気でうそがつける、ことになる(ただし本人はうそをついているとは思っていない)。
★i.話は変わるが、少し前にベストセラ-になった本に“お役所の掟 ぶっとび「霞が関」事情”(講談社:1993.4.20第1刷)がある。著者の宮本政於氏はコ-ネル医科大学精神分析・神経科助教授、ニュ-ヨ-ク医科大学精神神経科助教授、アルコ-ル医療病棟医長を経て、1986年厚生省に入省。ペック氏同様の精神分析を「役所に於ける集団心理」を対象に行った分析レポ-トが上記著書である(あとがきにその旨が記されている)。日本での出版は宮本氏の方が早かったため単なる内部告発、暴露本というような位置づけになってしまったが、ペック氏の翻訳がもっと早く出ていれば「役所という集団」の心理分析研究書として別の評価を得ることが出来たのではないだろうか。なお、宮本氏は1994年4月神戸検疫所検疫課長に4度目(?)の左遷の後、1995年2月懲戒免職となっている。最新刊は「お役所の精神分析」(講談社:1997.3.10第1刷)。
「体」体質改善にかかる期間
★a.われわれの身体は生きるために新陳代謝をおこなっている。古い細胞はつねに、新しい細胞に入れ替わっている。全身の98%が1年で入れ替わることがわかっている。
★b.入れ替えのスピードは身体の各部分によって違っている。胃の内壁はわずか1週間でまったく新しくなるし、皮膚は1カ月、肝臓は1カ月半で生まれ変わる。更新速度の遅い部分もあるが、結局、5年たつとわれわれはすべての細胞を更新してしまう(濱野恵一「脳とテレパシー」1996.6.1初版:河出書房新社夢新書p73-74)
★c.小池聰行著「超細胞革命」(徳間書店:1996.4.30初版)によれば、自分が変性意識状態(呼吸法、瞑想によって得られる特殊な人間の意識の状態)になったときに、すべての細胞に向けて「宇宙に全てを任せた」と呼びかけ細胞の意識を変えてしまう。細胞との対話をくり返すと、細胞の意識と通じあって、細胞がすばらしい方向に変わり始める。
★d.人間の細胞は半年くらいで全部入れ替わる。病気の人も半年もたてば新しい細胞に入れ替わるのだから病気は治るはずである。それが治らないのは病気になっている細胞も「我」を持っていて、自分と同じ細胞をまた作り出すからである。
★e.細胞は半年ごとに生まれ変わるのだから、じっくり細胞に話しかけ、細胞の意識革命を続けていると次に生まれてくる細胞から、少しずつネガティブな悪い意識が消えていく。次の半年にはさらにこうした意識が薄くなり、やがては完全に消えてしまう。
★f.小池氏は「甘いものを食べると胃が痛くなる」という体質になっていたのを「甘いものを食べても何でもないぞ」と半年以上言い聞かせ続けて体質を治してしまった、という(p154-160)。